食品ロス論ーその6経済問題としての食品ロス

食品ロス論ーその1
その2食品ロスの定義
その3食品ロスの問題
その4環境問題を第一義とすべきでない理由
その5食料安全保障と食品ロスの続きです。

食品ロスと経済問題について書きたいと思います。といってもこのテーマはサプライチェーンの立ち位置や会計方式によって見方が変わるので非常に複雑です。
そもそも「経済問題」だけでは問題の定義が曖昧ですね。
企業活動の目的を「自らの経営資源を最大限有効活用して、利益を最大化すること」と定義したときに、食品ロスとどう向き合うべきか、考えてみましょう。

前回書いた通り、供給量と需要量の差分によって食品ロスが発生するのであれば、「需要に合わせて供給する」というのは理にかなってそうです。実際、AI等を使って需要予測の精度を上げる取り組みは増えています。「供給」というのは一時段階の生産や調達、加工のための製造、発注を指します。

ただ考えてみると、一般的に一度に多くの量を生産したり、調達することは単位当たりの生産額や調達額を安くすることに繋がります。「お金」は経営資源の最たるものですから、生産量や調達量を抑制することは経営資源の最大有効活用に繋がりません。

製造段階ではどうでしょうか。需要に合わせて製造すればよいでしょうか。
しかし「工場」もまた企業にとっては経営資源のひとつであり、「工場稼働率」は経営資源を有効活用する指標として意識されているものです。

以上の様に、経営の基本でもありますが「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」といった経営資源をフルに活用して利益を最大化するためには、時に食品ロスを出した方が合理的というケースが確かに存在します。
このテーマのその1に「(廃棄を出す方の)食品廃棄目標が設定されていた」という話を紹介しましたが、当時は当時で経済性の観点から食品ロスと向き合っていた、という見方もできるのですね。

勿論、こちらの定義の様に「経済的な正しさ」だけを追求するのが経営ではありません。環境問題にも社会問題にも配慮をすることで、持続可能な経営をしていくことが求められていますので、「食品ロスを出さないようにする」のは間違いではありません。ただし、改めて書きますが「立ち位置や会計方式によって見方が変わる」ので、「食品ロスを減らす」ためには従来の評価制度や経営に対する考え方を改める必要があります。単位当たりの調達コストが高くなることを容認したり、稼働率が上がらなくても評価が下げないなど、バリューチェーンの在り方を変革する必要があるでしょう。

色々な食品企業の取り組みを聞いたり、相談を受けたりしますが、一部門の視点に偏っていて会社全体で意味のある取り組みと言えるのか、と思うことが多くあります。一部に偏った打ち手は全体利益の最大化に繋がりませんし、継続性も薄くなってしまいます。そうした状況はみんなにとって不幸なので「食品ロスとどう向き合うべきか」という点について考えを統一すべきと考えます。

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