食品ロス論ーその1の続きです。
本日のテーマは「食品ロスの定義」についてです。「そんなの知ってるよ」なんて言わずにお付き合いください。
日本(農林水産省)の食品ロスの定義
農林水産省による食品ロスの定義は「本来食べられるのに捨てられてしまう食品」とされています。…ですが、農林水産省による定義にはかつて「流通の各段階で発生する」という一文が付与されていました。いつ、どうして、この一文が削除されたか、把握できてません。気づいたら無くなっていました。
と言うのも、農林水産省による定義では「一次流通の生産時点」による食品廃棄は食品ロスに含められていないのです。一次流通での廃棄というのは農家などによる所謂「生産調整」による廃棄を指します。これは直近の「食品ロスの現状」資料をみても確認できます。

(出所:農林水産省「食品ロスの現状(令和2年度推計値)」)
農林水産省において食品ロスを担当する部局は令和6年9月現在「新事業・食品産業部外食・食文化課食品ロス・リサイクル対策室」ですが、元々は不可食部の廃棄を含めた食品廃棄物と含めて「食品流通課」の管轄でした。一方、一次流通の廃棄である生産調整は「農産局」の管轄となっています。
世界の食品ロスの定義
世界における食品ロスの定義はどうなっているかも見てみましょう。
国連の食糧農業専門機関であるFAOによるFood lossの定義は以下となっています。
逐語訳としては、「小売業、フードサービス提供者、消費者を除くフードサプライチェーンの決定事項や行動によって発生する食料品の量的または質的損失」でしょうか。「決定事項(decisions)」は「商慣行」、「取引ルール」などと訳すとより意味が分かり易くなるかもしれません。
いずれにしても、日本の農林水産省の定義とはだいぶ異なることが分かります。
FAOでは、Food lossと類似した定義として、Food wasteというものも定義あります。Food wasteの定義は以下の通りです。
逐語訳としては、「小売業者、フードサービス提供者、および消費者による決定事項と行動によって発生する食料品の量的または質的損失」となります。
サプライチェーンの段階によって、川上に位置している場合はFood loss、川下に位置している場合はFood wasteと区別しているようですね。またFood loss/Food wasteの両方において、「量的な損失」だけではなく「質的な損失」にも目を向けているのが特徴的です。この場合の質的損失には経済的価値や味覚的価値、栄養的価値などが含まれているでしょうか。
日本と世界の定義の違い
「食品ロス」自体は学術用語では無いですから、組織や地域によって定義が異なるのは当然だと感じます。その組織のミッションや責任を負える範囲などで扱いやすい定義とするのは「食品ロス」だけでなく、多くの新用語で見られるものです。
最近、「隠れ食品ロス」などという言葉を目にしますが、隠れている訳でなく国際的な定義ではFood lossなのにね。と感じる次第です。
農林水産省の定義が絶対では無い(農林水産省の食品ロス関連事業で予算を頂く場合等は除く)ですし、グローバルで「食品ロス」を使う際は、組織や地域によって異なる意味を持っているので注意しましょう。というお話でした。

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