↓の続きとなります。
近代食品流通史-その1
近代食品流通史-その2海外食品小売チェーンの進出と撤退
近代食品流通史-その3広がらないシェア
戦後日本の食品小売業はアメリカのチェーンストア理論に大きな影響を受け発展してきました。しかし、日本には戦前より卸流通を基盤としていたため、アメリカ式のチェーンストア経営でなく”日本型チェーンストア経営”であった点を解説してきました。
今後、日本は人口減少が進み、小規模のパパママストア等は事業継承が上手くいかないケースもあるでしょうから、食品小売業でも大手のシェアは上がるでしょう。そうなると、卸流通を介さない本場アメリカ式のチェーンストア経営を更に志向するようになるのでしょうか。
本日はこの点について書きたいと思います。
結論から申し上げると、「全くありえなくはないが可能性は低く、筋も悪そうだ。」というのが私の考えです。以下に理由を記載します。
理由1:生鮮部門は成長領域でなく、投資の優先順位が低い
多くのスーパーは部門単位で収益管理をしていますが、生鮮三部門(青果・水産・畜産)は成長部門ではありません。むしろスーパーで成長部門と言えるのはほぼ惣菜のみです。ですから、投資をする際の優先順位はどうしても総菜部門から、となります。生鮮のバリューチェーンを一新するような大規模投資をするよりは、お客さまを引き付ける新メニューの開発や製造設備への投資で来店頻度を高めてもらうことが重要と考えるチェーンが多数を占めるでしょう。
理由2:大規模な投資に対して期待できるリターンが低い
とはいえ、あえて生鮮部門でお客様を引き付けたいと考えるチェーンが存在しても全く違和感はありません。そうしたチェーンにとって自前で流通を構築する可能性は無くはありません。但し、自前で卸売市場に代替する設備を構築するとなると大規模な投資が必要となります。中央卸売市場の再整備費用は数百億円規模となることが多いですが、これはハード面の費用ですのでソフト面を含めると数千億円規模のイニシャルコストが必要になってしまうかもしれません。では、それだけの大規模な投資に対するリターンは見込まれるでしょうか。確実に期待できるリターンは卸売事業者に支払っていた手数料額のみです。品質面はそれほど大きな改善は見込まれないでしょう。もちろんブランディングやイベントなどで副次的なリターンはあるでしょうが、日々のランニングコストもかかることになりますから、投資回収するのは相当難しそうです。
難しいと言っても、それを考えるのがコンサルの仕事だろうが。と言われてしまえばそれまでなのですが。
理由3:戦略投資としても「多様性」に逆行
この連載の契機となった日経新聞のオピニオン記事では「多様化」に対応しているチェーンが成長している、とありました。何度も書きますが、チェーンストア経営は取扱商品の選択と集中により大量に安定的に安い流通を目指すものです。日本の卸流通は小規模事業者・生産者でも商品を受け入れていることから多様な食の選択肢を提供することが出来ています。つまり、本場のチェーンストア経営はこれから求められる戦略の方向性としても筋が悪そうだ。という話となります。
ざっと書いてみました。
チェーンストア経営は既存の流通チェーンの基礎となっていますが、それ故に自由度が制限されている部分もあります。「地域に合わせた品揃え」はその通りなのですが、それをしてしまうと、取り扱う商品は店舗ごとにバラバラとなり、特定商品の流通量はさほど増えず、チェーンストア経営の利点が活きないのです。なのでワゴンコーナーの様な一部の棚でしかそういった取り組みが出来ないジレンマとなっています。
卸を外すために大規模な投資を検討するよりは、卸と仲良く付き合っていく(「卸をうまく使う」とはまた別です。)サプライチェーン間での協調が求められます。

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