近代食品流通史-その3広がらないシェア

↓の続きとなります。
近代食品流通史-その1
近代食品流通史-その2海外食品小売チェーンの進出と撤退

卸流通を基盤とする”日本型チェーンストア経営”はそこに慣れていない外資系食品小売チェーンにとって大きな壁であった点を紹介しました。
ただし、”日本型チェーンストア経営”は本場のチェーンストア経営を目指す日本のチェーンにとっても時に障壁となります。今日はそういうお話です。

チェーンストア経営の目的のひとつに「シェアを上げること」があります。シェアが上がれば流通量が増え、1ユニットあたりの調達価格は更に抑えられ、より低価格での販売が可能になり、シェアが上がる…といったサイクルがチェーンストア経営の理想なのです。

そんなチェーンストア経営によるシェアの比較を見てみましょう。
アメリカ食品小売業の売上高は同国センサスによると2022年に9,488億ドルとなっています。同じ年度のウォルマートの売上高は5,728億ドルなので、そのシェアは60.4%となります。
一方で、日本の食品小売業はこちらの記事で特集が組まれていますが、日本食品小売業の売上高が45.5兆円なのに対して、イオングループ全体で10.4%、セブンアンドアイホールディングスで9.9%、上位10社を足しても34.9%ほどとなっています。

タイトルにも書いた通り、日本の食品小売業はチェーンストア経営を推し進めているにもかかわらず、アメリカの様に寡占度の高い業界となっていません。

この要因を”日本型チェーンストア経営”の観点から考察すると、以下の様に纏められます。
・大量調達による調達価格抑制・低価格販売が本来のチェーンストア経営
・しかし、その役割は小売業の川上にある卸が担当
・故に、卸から大量に調達しても価格差は大きくつかず、価格での差別化が(特にアメリカのチェーンストアに比べて)明確でない

もちろん、日本とアメリカのライフスタイルや社会環境の違いなども関連しているでしょうから、要因がこれだけ、ということはありませんが、”日本型チェーンストア経営”ではシェアを上げていくのは非常に困難な競争環境にあるといえるでしょう。

またそれは、別の観点で日本の食文化の発展に寄与しています。それが、食の多様性です。大小様々なチェーンが混在することで、定番品を安く取り扱うチェーンがあれば、地元の特産を取り扱うチェーンまで多種多様な食の選択肢を享受できることとなりました。世界において”日本の食”が評価されている点はこういった環境が大きく貢献しているはずです。

そうはいっても、日本の大手チェーンもシェアは上げていますし、今後高齢化社会の進行に伴い、”日本型チェーンストア経営”から卸を介さない本来のチェーンストア経営に舵を切るのでしょうか。

次回はその可能性について書きます。

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