鈴木宣弘『危機認識の欠如した「食糧法」改定』が酷すぎて (4)なぜ「国防」でコメ増産を主張するのか

元記事はこちら
(1)増産すればいいの幻想
(2)流通実態把握なんか無駄?
(3)「国防」を盾にした感情的ポピュリズムの続編です。

これまでの連載で、鈴木氏の主張がいかに経済合理性や流通データを軽視しているかを指摘してきました。第4回となる今回は、彼が本記事の中で最も強い危機感を込めて放った「セルフ兵糧攻め」という言葉と、「国防の手段として、コメの増産・備蓄のみに依存すること」の非現実性、及びなぜここまで「国防」でコメ増産を煽るのか検証してみます。

”これは驚くべき危機認識の欠如です。ホルムズ海峡封鎖のような事態が現実味を帯びているのに、そんなことを言っている場合ではない。こんな政策を続ければ、政府が国民を飢えさせる「セルフ兵糧攻め」になりかねません。今目覚めなければ、手遅れになりかねない。そのときに、こんな方向の食糧法改定をやっているわけです。”
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】危機認識の欠如した「食糧法」改定 |
JAcom 農業協同組合新聞(2026年4月24日)から引用)

「セルフ兵糧攻め」は鈴木氏が好んで使う言葉(この記事でも使ってます)の様です。前回記事で「感情的なポピュリズムによる政策誘導」を批判したのですが、仮にそうでなくても「国防」の議論にコメ増産を持ち込むのは「悪手」と考えます。(ナンセンスまでとは言いません。)

「兵糧攻め」は食料補給の断絶だけでなく、エネルギーや通信、情報の遮断による経済活動の停滞や社会不安の増長を含むものです。食料確保だけをすればいいという話ではありません。

そういう複雑な安全保障の議論の中に「コメ増産」を無理に持ち込むと、どうなるか。 「他国依存を減らす」という方向性は理解できますが、「では、エネルギー(電気やガス)が遮断された極限状態で、炊飯に大量の水と熱を必要とするコメは、本当に防衛食として最適な品目なのか?」とか、「食料供給の断絶リスクを軽減するなら、国内にため込むより友好国との調達ネットワークを構築しておくべきではないか」といった、本来の農業政策とは別の議論を次々と生んでしまいます。 つまり、「国防に対する現実的な手段として、コメ増産の優先順位は本当にそこまで高いのか?」という冷静な反論を招くだけなのです。

そして、ここまで書いてきてなぜ鈴木氏はコメ増産の根拠として「国防」を主張するのか不思議に感じました。普通に考えて、美味しくて、栄養価が高ければ、おのずと需要は生じるはずです。コメは有事だから食べるものでは無い。

邪推ですが、「国防」という外部要因・危機に頼らないとコメは選ばれないとでも考えているのでしょうか。そうだとすれば、コメのポテンシャルを否定しているのは他でもない鈴木氏ということになります。

私自身、コメは好きですし、こだわってコメを作られている方が作り続けられる世界を作りたいと思っていますが、そのアプローチはより魅力を引き出す・広げるという形で行うべきですし、そのポテンシャルはまだあると考えます。なので「国防」でコメ増産を主張する人たちには違和感を感じます。

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