
少し前ですが、農業協同組合研究会において令和のコメ騒動に関する報告がされていました。
【農業協同組合研究会】第1報告 令和の米騒動 生産不足が最大要因 事後調整が課題 日本大学教授 西川邦夫氏
JAcom 農業協同組合新聞(2026年5月27日)
まず、この記事タイトルには若干のバイアスがかかっています。
本文での西川教授の主張は「需要に対して供給が足りなかったことが要因だと考えるのが自然」「23年産では44万tの需給ギャップが発生した」と話しているように発端は需給ギャップ(5〜6%の不足)であったと語っています。
そして「24年8月の南海トラフ地震情報が出た端境期に店頭から米が消えたということはこれで十分説明できる」としてパニックの引き金は「地震情報」であり、「日本はこの需給調整については収穫前の生産調整に集中しており、収穫後の流通対策が準備されていなかった」として流通対策(事後調整)の重要性を挙げています。
西川教授の主張はこちらにも載っていますが、「需要見通しは外れるもの」を前提とした上で、生産調整規定が無くなるのだから、事後的な流通対策に政策がシフトすると言っているものです。
本文をしっかり見ると西川教授の主張はもっともだと思うのですが、記事タイトルからは「生産不足が最大要因」⇒「増産が必要」とミスリーディングを誘うものとなっています。
さて、本来書きたかった話はこちらなのですが、生産不足論は、農業界に限った話ではなく、昨日の赤澤経済産業大臣の定例記者会見における、ナフサ不足に関するやり取りにも全く同じ構図が見て取れます。
赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要
経済産業省(2026年6月9日)
”Q:大臣、ナフサのいわゆる目詰まり問題なんですけれども、私も6年間ぐらい化学業界の取材をしておりまして、目詰まりの対策は一番川上のナフサクラッキング設備の稼働率をうんと上げて、川の上流から水をどんどん流してあげれば、川中、川下も支え切れずに物が流れていくと。これは石油化学工業のイロハのイだと思うのですけれども。(以下略)”
”A:全く認識を異にします。事実関係としても間違えていると思います。これ起きている問題をしっかり認識してもらうことが必要で、何か先ほどナフサを上流から豊かに流せば下に流れていって需要を満たすみたいなことを言いましたけど、全くずれていると思います。それは端的に言ってしまえば、必要な量、これまでと同じだけ国の中にあっても、例えば皆さんがいつもの10倍発注したときに、その需要を満たすにはいつもの何倍要ると思われますか。10倍供給することって現実的ですか。数倍でも全く非現実的だと私は思います。いろんなことをすっ飛ばしておっしゃいましたけど、そういう何か余り現実的でないことを何か常識だとかいって言うこと自体、私自身はちょっと問題じゃないかと思いますね。(中略)原油を精製したときにナフサが10出てきます、ガソリンが29、軽油が24、ほぼ割合が決まって全部出てくるわけです。ナフサを増産しろという話は、そのナフサの10をやったときに、ガソリンでは29、軽油では24どんどん出てきて、それを精製した元売はどこに備蓄するんですか。どこに貯めておくんですか。それに必要な量、例えば何倍も生産したときにタンクないですよ、国内に。どうされるんですか。そういうことを全部すっ飛ばして、何かそれが常識だといっているので、それはやっぱり違うのではないでしょうか。(以下略)”
ナフサとコメは産業構造の違いはあるでしょうが、日頃からたくさん作れば良いという単純な問題ではないです。
JAcomはちょっと前の記事もそうだったように、生産者側に立つのは団体の自由だが、社会の公器を自負するメディアであれば、現場の需給実態と物理的制約に基づいた、より冷静な編集方針を求めたい。

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