さいたま市食肉中央卸売市場廃止の余波を考える(2)

さいたま市食肉中央卸売市場廃止の余波を考える(1)の続編です。

食肉の市場経由率は8.1%に留まり、行政の担う役割が薄れてきている」について考える
さいたま市のリリース「1-4 食肉中央卸売市場・と畜場事業(現施設)の検討」には「現状、全国の食肉の市場経由率は8.1%に留まり、行政の担う役割が薄れてきています。」との記載があります。
食肉の市場経由率は青果物(野菜・果実)・水産物・花きに比べ低いことは確かです。

(出所:農林水産省「令和6年度版卸売市場データ集」より株式会社ジャスタコンサルティング作成)

何故、食肉市場の市場経由率は低いのでしょう。
食肉市場内で行われる業務は取引(せり・相対)だけでなく、「と畜業務」を含むことが青果物・水産物・花き市場と明確に異なる点になります。

「と畜業務」とは生産地から運ばれてきた牛や豚を「お肉」にするための業務です。「と畜業務」はどこでも出来るものではなく、食肉卸売市場若しくは食肉センターでなければいけません。
しかし、既に輸入牛肉の様に既に「お肉」の状態で国内に運ばれている場合は国内の卸売市場・食肉センターで「と畜業務」を経由する必要が無くなります。

下記は少し古いデータですが食肉卸における牛肉の仕入れ先のデータです。輸入牛肉は商社経由で流通されることが主流であり、この分が全体の市場経由率の押し下げに繋がっていることが分かります。

一方で、和牛・交雑牛は20.0%・28.7%が食肉卸売市場からの仕入れとなっています。国内で生産された牛にとって卸売市場はまだ「主要な経由先のひとつ」と位置付けられます。

(出所:公益財団法人日本食肉流通センター「食肉流通実態調査 事業報告書(令和2年6月)より」

ちなみに食品卸における豚肉の仕入れ先のデータはこちら。あれ?豚は国産でも低いじゃん、と思うかもしれませんが、豚は長距離輸送に耐えられない特性があり産地から離れた消費地市場である食肉市場では取扱いが少ないのです。

(出所:公益財団法人日本食肉流通センター「食肉流通実態調査 事業報告書(令和2年6月)より」

もうひとつ食肉市場の特性として、せり取引の割合が高い点が挙げられます。

(出所:農林水産省「令和6年度版卸売市場データ集」より株式会社ジャスタコンサルティング作成)

もはや卸売市場は相対取引が主流といえる中で、未だ食肉市場だけせり取引が主流となっています。これは食肉流通では既に売り先が決まっている(相対)場合は食肉センターに運び、売り先が決まっていない場合は食肉卸売市場に運ぶ構造となっているためです。

食肉センターを運営するのは食肉メーカー等、自社製品として安定的に纏まった数量を調達する。食肉卸売市場は小売店や個人の焼き肉屋など少量や特定の部位が欲しい方が買いに来る場所と流通の役割が異なっているのです。

これは、さいたま市の報告(PDFの方)に記載されている食肉卸売市場の目的「食肉の公正かつ安定的な取引の確保、および市民への安心・安全な食肉の安定供給を担う。」に沿っており、決して市場経由率だけで「役割が薄れた」といえるものではありません。

そして、なにより、これら市場経由率だけでは食肉卸売市場の役割や機能が図れないことを食肉卸売市場を運営しているさいたま市は承知しているはずです。食肉卸売市場は不要とする論拠以上に必要と言える論拠も出せるのです。表面的なデータのみに言及して「役割は薄れた」と結論付けるのは、やはり財政状況において廃止せざるを得なくなったものの、それだけでは格好悪いので後付けの理由を並べた様に見えてしまいます。

本件全体の結論
1.財政状況で卸売市場を維持できなくなってしまったことは仕方ない。
2.ただ、全ての食肉卸売市場に当てはまる表面的な論拠を挙げて「役割が薄れた」などと言及することは全国の食肉インフラを脅かすものであり、賛同できない。

さいたま市のリリースは非常に罪深いものであると感じています。

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