コメ需要の伸びは「インバウンドのおかげ」は本当か?

秋田市場の話題から逸れてしまってすみません。
コメ需要についてNHKのニュースがありました。

“米がない”米不足はいつまで続く 品薄の背景は?福井では直売所でコメ販売できず 滋賀で新米の出荷も | NHK | 農業

農林水産省によりますと、6月までの1年間の主食用のコメの需要は、702万トンと前の年より11万トン増え、10年ぶりに増加に転じました。
”農林水産省は、インバウンドが好調だったことに加え、パンや麺など、ほかの食料品に比べると値上がりが緩やかだったことなどから、需要が伸びたのではないかとしています。”

話題になっているのは令和5/6年の需要実績であります。民間在庫量が昨年同時期と比べて41万トン減の156万トンとなったことや食品スーパーなどで売り切れが出ていることから連日話題になっています。

このコメ需要増加についてインバウンドの効果がどれほどのものか検証してみます。
日本政府観光局(JNTO)集計による訪日外客数の推移は下記の通りです。

(出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」、単位は百万人*2024年6月は推計値)

改めて新型コロナからの回復を実感しますね。2022年7月~2023年6月までの合計は約14.0百万人、2023年7月~2024年6月までの合計は約32.1百万人と訪日外客数だけでは約2.3倍となっています。
但し、コメ需要に関していうのであれば、食事の機会が重要になります。すなわち、これら訪日外客が「どのくらいの期間滞在したか」が重要となります。観光庁が3か月に1回インバウンド消費動向調査という統計を取っていますので、そちらの国籍・地域別平均泊数という調査を見てみましょう。

(出所:観光庁「インバウンド消費動向調査 全国籍・地域 平均泊数」、単位は日)

新型コロナ時に来日されていた方は、基本的に中長期間滞在されていたことと、滞在日数でいうと徐々に短くなっていることが分かります。気軽に来日できるようになったということですね。先ほどのデータと結び付けて、簡易的に「訪日外客宿泊日数」を算出してみると、2022年7月~2023年6月までの合計は約169.8百万泊、2023年7月~2024年6月までの合計は約295.7百万泊と伸び率は約1.7倍程度とシンプルな訪日外客数に比べて若干減りました。

インバウンドの方が日本滞在時にコメをどの程度食べるかを集計しているデータはなさそうなので、仮に1日1食ご飯1杯分(200g)を食すと仮定すると、2022年7月~2023年6月までの合計は約3.4万トン、2023年7月~2024年6月までの合計は約5.9万トンとなりインバウンドによるコメ需要の増加は約2.5万トンと試算されます。

そんなに食べるかなあ。というデータですが、少なくとも国内一人当たりの需要増の方がインバウンドの影響よりも勝っていそうですね。

ところで元ソースはどこに?
冒頭のNHKのニュースでは「農林水産省によりますと」と記載されていますが、農林水産省はいったい誰が「インバウンドが好調だからコメ需要が伸びている」と発言をしているのでしょうか。
令和5/6年の需要実績は農林水産省の米に関するマンスリーレポート(令和6年8月)で報告されているものですが、「コメの価格が相対的に上昇が緩やかであったため消費が増加」とのみ報告されていて、「インバウンドの影響」については言及されていません。

(出所:農林水産省「米に関するマンスリーレポート(令和6年8月)」)

農林水産省のホームページを検索してみましたが出てきません。大臣記者会見でもそのようなコメントはしていないようです。NHKが農林水産省に取材していない(まさか、そんなことないよね?)とは考えづらいので、取材を受けた農林水産省の担当者がそう感じてNHKにコメントしたのかもしれません。

農林水産省の公式見解で「インバウンドの影響」のソースがありましたら教えて頂けますと幸いです。

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